書名 |
自閉症スペクトラムの精神病理 ―星をつぐ人たちのために |
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筆頭著者 |
内海 健・著 |
出版社名 |
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ISBNコード |
ISBN978-4-260-02408-2 |
発行年 |
2015年11月 |
判型 / 頁数 |
A5判 / 304頁 |
分類 |
臨床医学系/精神神経科学/精神医学 |
価格 |
定価3,850円(本体3,500円 税10%) |
精神科医が日々の診療場面で出会う青年期・成人期の「自閉症スペクトラム」(ASD)を対象とした臨床論。障害の受容、適応、さらには共生をいう前に、あたかも異星人であるがごとくこの星に棲むための苦労を重ねている彼らがどのような世界に棲んでいるのか、そもそもの経験の成り立ちについて、もう少し突っ込んで考えてみることはできないだろうか——精神科臨床の基本ともいうべき精神病理学のテイストを下地にまとめられた書。
はじめに
1章 「心の理論」のどこがまちがっているのか?
心の理論/「サリー-アン問題」のどこが問題なのか?/
心が読めること,心というものがわかること/直観でわかること,推論してわかること
-ASD者がわからないのはサリーではなく,アンである/
推論だけで作動するシステム/「心の理論」による代償/事後的な「こころ」
2章 なぜ他者のこころは直観できるのか?
他者というあり方の両義性/われわれは他者にいつ出会うのか/
「志向性」というもの/私から他者に向かう直観は挫折する/
理論説とシミュレーション説/直観のベクトルを反転せよ/
他者の側面図から正面図へ/了解は応答のなかに含まれる
3章 まなざしの到来
顔(おもざし)/視線触発/まなざし/ひとみしり-自己が触発されるとき/
他者が置いたしるし<φ>/<φ>は経験を超えたものであること/
<φ>をめぐる病理/φのまとめ
4章 9か月革命
自他未分という原点/象徴的個体化/9か月目からの再編/
他者は志向性を軸にまとまりあがる/sympathyとempathy/
指さしと共同注意/心的距離/距離の未形成/「みえる」と「みる」/
ハイマートとしての「みえる」/9か月革命のまとめ
5章 現前の呪縛-想像力の問題
奥行きのない世界/みえているのがすべて/余白の乏しさ/
自分はどこにいるのか/動かない大地/壊れない母/想像的身体/
抱えられること/現実と想像
6章 反転しない世界
一方通行路/呼びかけと応答/人称の混乱/固有名/反響しない世界
7章 地続きの世界-sympathyとempathy
「同一性保持」という現象/自と他/親と子/夢と現実/
sympathyとempathy/場違いなsympathy/私心なき傍若無人
8章 「司令塔」のない自己-被影響性について
文脈からのデカップリング/文脈のわからなさ/染まりやすさ/
規則に染まること/解離現象/対処としての解離/距離のめばえ
9章 認知行動特性
φの二つの機能/経験を束ねることの障害/
文脈からのデカップリングの障害/まとめ
10章 ことばの発生
9か月革命の完成/ASDは言語を道具として用いている/
ことばは道具ではない/言語はカタログではない/
シニフィアンによる切り取り/自閉症の原初的ことば/
成人ASDのことばの二つの様態/
バナナを受話器とみなすこと-「振り」と「ごっこ遊び」/言語ゲーム
11章 私的言語と感覚過敏
エコラリアから始まる/取り残されたことば/私的言語への傾き/
葛藤がみえない/「痛いの?」/ぼくはおなかがすいていたのだ/
差異のざわめき/感覚過敏について/疲れやすさ/「ことばのまえ」という故郷
12章 自己へのめざめ
孤立のなかへのめざめ/抑うつ/パニック/トラウマ/もう一人の自己/
他者へのめざめ/プロテスト/まとめ
13章 鑑別診断-統合失調症と境界性パーソナリティ障害
統合失調症との鑑別/BPD(境界性パーソナリティ障害)との鑑別
終章 臨床デバイス
いくつかの原則/関与のためのデバイス
あとがき
索引