本書は、30年にわたって精神科医療に携わってきた著者による、約3， 000例のアルコール性疾患、および他の薬物中毒患者の報告書である。その内容は、消化器系や循環器系の障害、尿酸値、眼球運動、誕生月、染色体、指箪紋、心理検査、脳波など広範囲にわたる。圧巻は症例検討における具体的かつ詳細な患者エピソードの紹介で、アルデヒド分解酵素の型分類に従った症例パターンごとに厳密な検討が加えられており、興味はつきない。本書はその副題が示すように、著者がこれまで献身的に取り組んできた病院精神医学研究の集大成と呼ぶべきもので、後進の研究家・臨床家にとっては、学問的に得がたい貴重な資料となるであろう。

序章
第1章　アルコール症患者の分類
第2章　アルコール症と宇都宮病院の背景
第3章　作業療法
宇都宮病院の1983年12月の作業療法実施状況
宇都宮病院の作業療法の実際
第4章 内科的所見
臓器障害:消化器系障害一―食道、胃、十二指腸
循環器系障害
第5章 アルコール症の調査研究
宇都宮病院入院中のアルコール症患者の薬理遺伝学
アルコール症と尿酸値
アルコール症患者と眼球運動
アルコール症と誕生月
アルコール症の染色体に対する影響
指掌紋
アルコール症患者のBRS
アルコール症患者のTHI
第6章 分裂病様症状を伴ったアルコール症
第7章 躁鬱症状を伴ったアルコール症
(参考症例〉断酒後に双極性の躁鬱病をきたした女性患者
第8章 反社会的傾向(犯罪、浮浪)のあるアルコール症患者(I)(Ⅱ)
第9章 1卵性双生児のアルコール症
第10章 ALDH2 Low Km酵素正常活性型のアルコール症と異常脳波
第11章 ALDH2 Low Km酵素活性欠損型(Hetero型)
アルコール症の2症例
アルコール症の兄弟例
第12章 ALDHl High Km酵素活性値とALDH2 Low Km酵素正常活性型(Homo型)
ALDH2 Low Km酵素活性欠損型(Hetero型)の総括
ALDHl HOh Km値とアルコール症発症の関連
覚醒剤中毒症との関連
アルコール症、躁鬱病、覚醒剤中毒症の患者入院期間との関連
ALDH2 Low Km酵素正常活性型のALDHl HCh Km低値者のアルコール症
第13章 アルコール症と染色体異常
精神病院における染色体異常
アルコール症ALDH2 Low Km酵素活性欠損型lushmg type(Hetero型)とXYY
ALDH2 Low Km酵素正常活性型non―fbshh9 typeとXYY
アルコール症ALDH2 Low Km酵素正常活性型∩on―fbshhg typeとXXY
第14章 〔付録〕アルコール症入院患者
第15章 〔付録〕非アルコール症の染色体異常
XYYの1症例
精神分裂病様症状を呈するKlinefelter症候群の脳波上にてんかん性異常波を伴う1症例
Fetishismを呈したXXYの1症例
後記
参考文献
索引