書名 |
腹部CT診断120ステップ |
---|---|
筆頭著者 |
荒木 力・著 |
出版社名 |
|
ISBNコード |
ISBN978-4-498-01340-7 |
発行年 |
2002年4月 |
判型 / 頁数 |
B5判 / 340頁 |
分類 |
臨床医学系/画像診断 |
価格 |
定価8,470円(本体7,700円 税10%) |
腹部CT診断のバイブルとして高い評価を得ている「腹部CT診断100ステップ」の待望の改訂新版.記載内容を全面的に見直すとともに,マルチスライスCTの導入を踏まえて最新の画像を多数盛り込んだ.解剖をベースとして診断のための思考過程を実践的に解説した本書の内容は,初学者から専門医までどのレベルの読者にとっても役立つものである.
序--改訂にあたって
「腹部CT診断100ステップ」の初版が1990年である.この十余年の間にCT診断も大きく変化してきた.まずCT装置.ヘリカルCTがあたりまえになり,マルチスライス(多列検出器型)CTも普及してきた.山梨医大附属病院のCTも2台がマルチスライス,1台がヘリカルである.これらには,時間分解能がよい(撮像時間が短い)ことと,長軸方向の撮像データが連続しているという特徴がある.画像マトリクスは従来と同じ512×512であるから基本的な空間分解能に差はないはずであるが,高速であるために容易に薄いスライスで広い範囲を撮像することができ,体動による画像の劣化を抑制できるため躯幹部における空間分解能も実際には向上している.時間分解能がよいために簡単に多時相のダイナミックCTが施行でき,患者のスループットが向上した.MPR画像や三次元画像もルーチン化している.
そして何よりも画像診断における役割が変わってきた.CTが最も情報量の多い画像診断であることに異論はないであろう.しかし,かつては「CTは時間がかかる」「CTは混んでいてすぐできない」ために,必要なときに撮影できないことも少なくなかった.しかし今やCTは単純X線撮影や超音波とならんで,時にはこれらに先んじて行う検査であり,いつでも可能な検査でなければならなくなってきた.急性疾患における役割も大きい.
さらに疾患概念や分類の変化.肝におけるAH(腺腫様過形成),NRH(結節性再生性過形成)など多様な結節群,膵や胆道におけるIPMT(管内乳頭状粘液産性腫瘍),膵炎診断におけるCTの役割etc.
これらを踏まえて,新しく「腹部CT診断120ステップ」として発刊することにした.日常診療に役立てば幸いである.
2001年12月 北岳,間の岳,農鳥岳が一夜のうちに真っ白になった朝に
荒木 力
初版の序
本書はCTを中心にした腹部画像診断を解説したものです.診断は画像診断だけで成されるものではありませんし,画像診断がCTだけで足りるものでもありません.しかし,CTや超音波に代表される非浸襲的診断法の進歩と普及により,診断能力が飛躍的に向上したことは万人の認めるところです.
画像診断学に入る道は様々です.X線検査から入る場合,CTから入る場合,超音波から入る場合,あるいは病理学から入る場合もあります.画像診断学を専門としている人でも,得意の分野も不得意の分野もあります.しかし,患者の立場に立てば,「何でもよいから,できるだけ苦しくない,痛くない方法で,早く診断して,治してほしい」と考えるはずです.
ここでは,CTを中心として診断を進め,CTの弱点を他の診断法(特に超音波,シンチグラフィ)で補うという流れで進めています.その理由は次の4つのCTの属性によります.
(1) CTは現在広く普及し,容易に撮影することができる.
(2) 画像として客観性が高く,独善的診断,すなわち応用の効かない診断学に陥りにくい.
(3) 患者の体格によらず,ある程度の診断レベルが保証される画像を得ることができる.
(4) 機能的診断や「透視」(real-time display)能力に欠ける.
CTの長所と短所(できれば他の診断法の長所と短所)を理解して,患者の為になる診断学を身につける一助となれば幸いです.
画像診断学の基礎は,CTや超音波やシンチグラムの理論を熟知することではなく,解剖学と病理学にあります.また画像診断学を修得するには,より多くの症例に出会うことが必要条件です.このため,より多くの画像を提示しようと,中外医学社の小川孝志,山口由紀子両氏には,多大な迷惑をおかけすることとなってしまいました.幸いにも,両氏の努力により,多くの画像とシェーマを掲載することができました.改めて御礼申し上げます.
また助言,ご指導下さった山梨医科大学放射線科,放射線部および各診療科諸氏,症例を提供して頂いた東大病院,聖マリアンナ医大病院,諏訪中央病院,朝霞台中央病院,飯富病院の皆様に厚く御礼申し上げます.
1990年3月
著 者
目 次
1.腹部CT読影のための基本レクチャー
STEP 1 CT値 2
STEP 2 造影法 5
STEP 3 嚢胞と充実性腫瘤 10
STEP 4 脂肪組織 14
STEP 5 ヘリカルCTとマルチスライスCT 17
三次元表示
2.肝・胆・膵・脾
STEP 6 肝の解剖 I 表面の裂溝 26
STEP 7 肝の解剖 II 門脈と肝静脈 28
STEP 8 肝の解剖 III Couinaudの区域分類 30
STEP 9 肝の解剖 IV 各区域 31
STEP 10 partial volume phenomenon 34
STEP 11 肝海綿状血管腫 36
STEP 12 肝細胞癌の特徴 40
肝細胞癌のCT診断
STEP 13 肝腫瘤のdynamic CTによる鑑別 46
STEP 14 肝細胞癌の門脈・肝静脈腫瘍栓 49
STEP 15 動門脈短絡 52
STEP 16~17 肝癌のリンパ節転移 54
portacaval space
STEP 18 肝硬変結節 57
Lipiodol CT,CTA,CTAP
STEP 19 肝硬変に伴う良性結節と肝細胞癌 61
STEP 20 FNH,NRH 64
STEP 21 FNHと肝線腫 66
STEP 22~23 肝外科手術後 73
胆道シンチグラフィ
STEP 24 胆管性嚢胞腺腫および癌 77
肝嚢胞性腫瘍
Echinococcosis
STEP 25 肝膿瘍 80
STEP 26 脂肪を含む肝腫瘤 83
STEP 27~28 脂肪肝 86
ヘモクロマトーシス
STEP 29~31 不均一な脂肪肝 90
肝片葉低濃度像
放射線肝障害
STEP 32~33 日本住血吸虫症 95
肝の不規則なびまん性高濃度陰影
STEP 34~36 肝硬変 98
脾 腫
門脈圧亢進症
STEP 37 脾腫瘍 105
STEP 38~39 脾嚢胞性病変 108
後腹膜リンパ節
STEP 40 胆道の解剖 112
STEP 41~44 胆管拡張 113
胆管結石
肝内胆管結石と肝石灰巣
CTと胆嚢結石
STEP 45 肝外胆管癌 117
STEP 46~47 肝内胆管細胞癌 120
限局性肝内胆管拡張
STEP 48 カロリー病 124
STEP 49~50 胆嚢癌 127
胆嚢の血管・リンパ管
STEP 51 胆嚢壁肥厚 131
STEP 52~53 正常膵のCT像 137
膵癌のCT所見
STEP 54 膵 癌 142
STEP 55~56 膵島腫瘍 145
膵島ホルモンとAPUDoma
STEP 57 膵漿液性嚢胞腺腫 149
STEP 58 膵嚢胞性腫瘤 151
STEP 59 膵管内乳頭状粘液産生腫瘍(IPMT) 155
STEP 60 脾動脈瘤,脾静脈瘤 158
STEP 61~62 後腹膜腔 160
急性膵炎
STEP 63 急性膵炎CT像 167
STEP 64 膵脂肪置換 171
3.腹膜腔
STEP 65 大網ケーキ 174
STEP 66 腹膜腔と網嚢 177
STEP 67 complicated ascites 181
STEP 68~69 腹腔リンパ節 183
胃癌とリンパ節転移
STEP 70~71 腫瘍の他臓器浸潤 188
胃壁の厚さ
STEP 72 平滑筋腫瘍 192
STEP 73 消化管悪性リンパ腫 195
STEP 74 腸間膜 198
STEP 75 虫垂炎とCT 202
STEP 76 腸重積 205
STEP 77 中腸回転異常 209
STEP 78 尿膜管 212
STEP 79 横隔膜の構造とヘルニア 215
STEP 80 腹膜外腔気腫 219
4.腎臓・副腎・後腹膜
STEP 81~82 腎細胞癌 226
腎癌のCT
STEP 83 腎癌の転移 232
STEP 84 腎細胞癌と血管芽細胞腫 235
STEP 85 血液透析と嚢胞と腫瘍 237
STEP 86 高濃度腎嚢胞 239
STEP 87 腎血管筋脂肪腫 241
STEP 88 腎盂腫瘍 244
STEP 89 腎腫瘤の石灰化 247
STEP 90~91 腎の石灰化 249
腎・尿管結石とCT
STEP 92 腎梗塞 252
STEP 93 腎盂扁平上皮癌と腎盂腺癌 254
STEP 94~95 腎周囲腔 256
腎血腫: 血腫の濃度
STEP 96 腎の動静脈短絡と腎門部血管拡張 260
STEP 97~98 腎の嚢胞性病変 263
腎盂尿管重複と水腎症
STEP 99 多嚢胞腎 268
STEP 100 副腎皮質機能亢進症 271
STEP 101 副腎嚢胞 275
STEP 102 褐色細胞腫と副腎髄質シンチグラフィ 277
STEP 103~104 機能亢進を伴わない副腎腫瘤 280
副腎石灰化
STEP 105~106 retrocrural space 283
神経線維腫症
STEP 107~108 下大静脈の発生 288
腎の発生
STEP 109~111 下大静脈閉塞部位と原因 296
下大静脈閉塞と側副血行路
Budd-Chiari症候群
STEP 112 下大静脈腫瘍 299
STEP 113~114 腹部大動脈瘤 301
大動脈解離
STEP 115 上腸間膜動脈塞栓症 307
STEP 116 大動脈瘤周囲線維症・大動脈周囲線維症 310
5.小 児
STEP 117 神経芽腫 314
STEP 118 Wilms腫瘍 317
STEP 119 小児肝癌 319
STEP 120 腎の悪性リンパ腫・白血病 323
卒業試験 325
索 引 335